光による物質の破壊
紫外線や赤外線には物質を破壊する力がある。エネルギーの高い紫外線は破壊力が強く、窓際に置いた本や写真が退色する現象や、ゴムが日光を長期間浴びて劣化するのは紫外線の影響である。赤外線は浸透力が強く物質を温める効果があるため、物質の膨張や縮小を誘発しそれを繰り返すことで物質は疲労による損傷が生じる。照明は紫外線や赤外線を放射しているものもあり、また紫外線や赤外線に隣接する可視光線でもある程度破壊の効果があるため、美術品などデリケートなものを照明する際には配慮が必要となる。
紫外線
紫外線は可視光線から近い順に、UVA(320nm〜400nm)、UVB(280nm〜320nm)、UVC(280nm以下)、の3つに分類されている。10nm以下の電磁波はX線やγ線と呼ばれる。電磁波は波長が短くなるほど波長の逆数に比例してエネルギーが大きくなるため、物質に対する破壊の影響も強くなる。ただし太陽から放射される290nm以下の紫外線はオゾン層に吸収されるため、地上にはUVA、UVBしか届かない。UVAは物質の退変色に関わり、UVBは肌を日焼けさせる原因となる。
美術館における配慮
美術館においては有害光線から展示品を保護するために様々な配慮がなされている。展示品に対して一度に照射できる光の強さや年間の累積照度を定めた照度基準はその一つであり、照射する光の量自体を制限して展示品を過度な破損から防ぐことが目的である。博物館用に有害光線の波長をカットした蛍光灯やLEDなども存在する。しかし可視光線にも有害光線が含まれる以上、展示に耐えうる演色性を保持したまま光による展示品の損傷を0にすることは難しく、展示する限りはある程度破損が生じてしまうことになる。
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