光の話 Lighttale for Art and Culture

放電灯

放電によってルミネセンスや熱放射光を発生させる照明であり、ネオン管や蛍光灯、ナトリウムランプやHIDランプなどの種類がある。放電とは、本来絶縁体である空気が高い電圧の電極の間で絶縁を維持できず電気が流れる現象であり、自然界でも雷などの形で観測される。照明に利用される際には空気でなく様々な分子の気体が用いられ、低い電圧・大きな電流で分子の温度も高いアーク放電と、高い電圧・小さな電流で分子の温度も低いグロー放電に大別される。放電灯はアレッサンドロ・ボルタが電池を発明し、安定的に電気を使うことができるようになった1800年以降に開発されるようになった。

最も古い放電灯はハンフリー・デイヴィーが1808年に発明した炭素アーク灯である。それ以前にあった照明にくらべ非常に明るく太陽の光のような色であり、人々におどろきを持って迎えられた。史上初の電気による照明であり人類が初めて手にした「白い光」であったが、炭素アーク灯はコントロールの難しさや寿命の短さなど難点が多く、その後いくつかの改良版が現れるものの、広く普及一般にすることはなかった。

1856年に、希ガスを封入したガラス管内に放電することで発光させるガイスラー管が発明される。これは発光実験のための器具であり照明を目的としていなかったが、このガイスラー管を基に蛍光灯などの次世代の照明が誕生することになる。

ムーアランプ・ネオン管

1894年に、窒素と二酸化炭素ガスを封入した放電灯であるムーアランプが発明される。高価ながら当時主流であった炭素フィラメント電球よりも明るく自然光に近かったため、ホテルやレストラン、教会などに設置された。しかしタングステンフィラメント電球の登場後には姿を消す。

1910年にネオンガスによる放電灯であるネオン管が発明される。その後アルゴンガスを用いるなど改良が加えられ、広告照明という独自の需要を確立し現在でも多く利用されている。

ネオン管の現代までの歴史についてはこちらから「ネオンの歴史と文化への道のり

蛍光灯

水銀蒸気への放電によって生じる紫外線を蛍光体に当てることで発光させる照明であり、1938年に発明される。放電と蛍光体の合わせ技による照明が、多くの放電灯研究者の目標であった新しい光の完成形となった。蛍光灯はその後改良が加えられつつ、白熱電球に変わる主要な照明としてLEDランプの登場まで広く普及することになる。

蛍光灯の詳細についてはこちらから「蛍光灯

HIDランプ(高輝度放電灯)

低圧放電である蛍光灯に対し、高圧放電によって発光する照明の総称であり、高圧水銀灯、高圧ナトリウムランプ、メタルハライドランプなどを指す。

水銀灯

ガラス管内に水銀蒸気を封入した放電灯であり、低圧水銀灯と高圧水銀灯に分けられる。1901年に最初の水銀灯が登場し、1944年に低圧水銀灯が、1947年に高圧水銀灯が実用化され市販されている。

水銀灯は管内の気圧によって水銀が放出するスペクトルが変化する。気圧の低い低圧水銀灯は紫外線が放出されるため殺菌用や紫外線光源などの特殊用途に用いられ、気圧の高い高圧水銀灯は可視光線も放出されるため照明として用いられる。一般的に水銀灯というときは高圧水銀灯を指す。蛍光灯は低圧水銀灯を応用した照明である。

高圧水銀灯のスペクトルは太陽光には程遠く、緑色がかった青白い光であり演色性が悪い。また点灯までに時間がかかるという欠点もあるが、効率が非常に良く、かつ電球や蛍光灯では実現できない強い光が出るため、街灯やスタジアムなどの公共機関に用いられてきた。現在ではより高機能であるメタルハライドランプが登場したことと、国内では水銀条約の採択に伴い生産されなくなっているため、メタルハライドランプに置き換わりつつある。

ナトリウムランプ

ナトリウム蒸気を使用した放電灯であり、低圧ナトリウムランプと高圧ナトリウムランプの種類がある。1919年に最初のナトリウムランプが登場し、1932年に実用的なものが発明されている。高圧ナトリウムランプは1960年に発明されている。

低圧ナトリウムランプは現在の照明の中でも最も効率が良いが、色は黄色の単色であり演色性は劣悪である。しかし単色光のため霧やスモッグを投下しやすいという特性を生かし、トンネル内の照明などに用いられてきた。高圧ナトリウムランプは演色性を改善したもので、白っぽい黄色の光を発する。低圧ナトリウムランプよりは劣るもの高い効率を誇り、広場や工場、また建造物のライトアップなどに用いられている。

メタルハライドランプ

メタルハライドは金属のハロゲン化物という意味であり、ナトリウムや希土類元素などの金属元素と、ヨウ素や臭素などのハロゲン元素による化合物を封入した照明である。1962年にGE社から特許が申請され、1964年頃から使用されるようになる。
高圧水銀灯の効率の良さと高出力の輝度を維持しつつ、演色性を改善した明かりであり、放電灯の中でも最も太陽に近い白く明るい光を放つ。元素の違いによって色を調節することができ、3000Kまで色温度を落とすことも可能である。高い効率と色の自由度から、自動車のヘッドランプや液晶プロジェクターの光源、街灯など、幅広い用途で使用されており、HIDランプの代名詞となっている。

また、ガラス管の代わりにセラミックを用いることでさらに効率や演色性を高めた上で小型化したセラミックメタルハライドランプが2000年頃に登場し、建築の設備照明や店舗の照明などに非常に広く普及している。

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